にしのみやデジタルアーカイブ・セレクション
にしのみやのアート Vol.2
このたび、西宮市大谷記念美術館が開館50周年を迎え、記念の特別展やイベントが開催されました。
今回のセレクションでは開館50周年を記念し、大谷竹次郎氏のコレクションの中から、先日まで展示されていた作品や次回展示予定の作品をご紹介します。
- お問い合わせ:西宮市大谷記念美術館
- 眠る草刈り女 ジャン=フランソワ・ド・トロワ作の模写
- ギュスターヴ・クールベ
- フランスと日本の近代絵画を好んで収集した大谷竹次郎氏のコレクションを代表する1点である。旧松方コレクションとして知られており、基になったジャン=フランソワ・ド・トロワの作品はフランスのニーム美術館が所蔵している。ド・トロワの作風そのままに、ロココ様式の優美さと演劇性を備えており、クールベの技量の確かさを示している。
- 潮より出る二人の女
- アンリ・ルバスク
- アンリ・ルバスクは、日常身辺の光景や家庭的な親しみのある画題を描いたが、この作品にある海水浴も20世紀の初頭には夏の娯楽として親しまれるようになっていた。紫を基調とした鮮やかな色彩で穏やかな海辺の情景が描かれており、女性が手にした風をはらんで膨らんだタオルと背景の波が、穏やかながらも画面上に動きを与えている。
- マルセイユの旧港
- アンリ・オットマン
- マルセイユは紀元前600年頃に開かれた地中海沿岸でも有数の貿易港である。空路が発達する前はフランスの玄関口としての役割も果たし、レオナール・フジタをはじめ黒田重太郎、小出楢重、児島善三郎、長谷川昇、林武ら多くの画家たちが訪れた。画面の右下端にはターバンを巻いた二人の男性が歩いており、国際色豊かな街の雰囲気を表している。
- レースを着る女
- 児島善三郎
- 児島善三郎は1925年から1928年まで滞欧したが、その間、初歩からやり直す決意を固めて洋画の基礎を学んだ。本作品はこの滞欧期の作品である。灰色の背景や身にまとった黒のレースによって、女性の素肌の美しさが際立って強調されている。そして量感あるモデルの身体の表現には、ヨーロッパの古典絵画から学び取った成果が表れている。
- 蛍
- 上村松園
- この作品に見られる兵庫髷(ひょうごまげ)は元和から寛文期頃まで流行った髪型で、着物が小袖であるのもその時代の風俗だろう。流水模様の帯、着物の裾に鉄線花という柄は、更なる涼しさを演出しており、また女性の傍らに蛍を一匹飛ばすことで、これが夕涼みの情景であることが明らかになる。
- 乗鞍
- 川合玉堂
- 川合玉堂はこの年、81歳になっている。3月頃まで病気をしていたがその後回復し、再び力のこもった作品を制作している。日展最後の出品作となった《屋根草を刈る》(東京都蔵)も同じ年の作品である。前景の木々には若葉が芽吹いているが、仰ぎ見る乗鞍岳はまだ残雪を多く残している。その雄大で特徴的な姿が美しい。
- 新鵑
- 木島桜谷
- 木島桜谷は京都画壇で力を持っていた今尾景年の愛弟子として、四条派の流れを引き継ぎながらも西洋風の陰影を取り入れた穏健な画風に特徴がある。この作品では、荒い墨の線を生かした描き方をしており、いかにも四条派風だが色彩は深い。左上の空に小さくホトトギスが飛び、薪を背負って山道を歩く人が小さく描かれる。初夏の情景である。
- 歳寒三友図
- 田能村直入
- 歳寒三友(さいかんさんゆう)とは、中国から由来した画題で、南宋時代以降、松竹梅を指すようになった。文人の理想とする君子の生き方を象徴する画題として好まれたが、松竹梅が描かれていることから、正月に用いられることが多い。この作品は清涼感のある淡彩で描かれ、凛と澄んだ冬の空気が感じられる。
- 淀城
- 冨田溪仙
- 富田溪仙は淀城をテーマにした作品をいくつか残している。明治維新で廃城となった城を惜しんだと言われていることから、安土桃山時代の淀君の城ではなく、のちに建て直された方の淀城の姿を想像して描いたものだろう。現地調査も行ったというが、出来上がった作品はどこか幻想的な理想美を湛えている。
- 大和心
- 横山大観
- 横山大観には富士山の絵が多くあり、それらは日本国の象徴として主に国威高揚のために求められた。この作品は本居宣長の歌「敷しまの 倭こころを人とはば 朝日ににほふ 山ざくら花」をもとに制作されている。日本の心とは朝日の中に照り輝いて咲く山桜の姿だという意味である。
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